2021.06.13 Sunday
マリカ・マイヤラを訪ねて夏のHarakka島へ
テキスタイルデザイナーとしての活動だけでなく、フィンランドを代表する絵本作家としても知られるマリカ(Marika Maijala)が久しぶりに個展を開催するということで、数年ぶりに夏のHarakka島へ遊びに行って来ました。 ※「マリカ・マイヤラと冬のHarakka島へ」過去の記事はこちら
Harakka島はヘルシンキの南東部に位置する離小島で、夏の間は定期的に本土との間を往復する小型船を利用して誰でも気軽に訪れることができます。乗船場のすぐ目の前から見えるHarakka島までは乗船時間が約5分弱。この日はマリカの展示の最終日だったこともあり、同じ船の中にはマリカと仲良しなイラストレーターの姿や家族連れで展示を目指す人々の姿が多く見受けられました。
展示会場の扉を開けるとすぐにマリカ独特の優しいタッチで描かれた多数の作品が来場者を歓迎してくれます。過去にフィンランドで出版された絵本の原画をはじめ、彼女が得意とする動物の絵や大切な友だちを描いたポートレートなど、クレヨンを使ったカラフルな作品もあれば、水墨画のようなモノトーンの作品まで、これまで以上に多様な作風の作品が所狭しと展示されていました。
多数ある作品の中で特に来場者の目を引いたのが、植物をモチーフにジャカード織でつくられた等身大のカーペットの存在です。カーペットの表面をよく観察すると、それぞれ微妙に異なる色のグラデーションで染色された無数の糸が緻密に紡ぎ合わされていることに驚きます。まるで時間の壁をタイムスリップしたかのように、遥か昔からフィンランドで培われてきたものづくりの伝統や美的価値観をそのまま現代に甦らせたような美しい作品でした。
展示会場の中央には大きな木箱が置かれていて、その中にはこの展示に向けてマリカが使用した画材や備品が雑然と収納されています。そして面白いことにその木箱を眺める私たちの耳にはかすかに聞こえるくらいの音量で、マリカが黙々と制作活動に勤しむ際の「カツカツッ、カツカツッ」といった作業音が聴こえる仕組みになっていて面白かったです。
マリカ(写真:右)にとってこの一年は、コロナ禍の中で1人孤独に制作と向き合う日々が続いた一年だったそうです。世界的パンデミックはまだまだ終息を迎えていませんが、その話を聞いて何よりも今回マリカが無事展示を開催できたこと、またそのことによって多くの人がマリカの作品を祝福すべくHarakka島へ集まり、彼女の貴重な作品を楽しむ機会を共有できたことがとても嬉しく感じました。
Harakka島は野生動物の特別保護地区としても有名です。ちょうど産卵期にあたる6月のこの時期は海を越えてフィンランドへやってくる渡り鳥の姿で島中が賑わいます。長くて厳しい北欧の冬がようやく終わり、短いけれど天国のような季節がはじまる夏のフィンランドでは多くの人々が再び幸せを実感できる季節が近づいています。
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